デコタミン - 旧車メルセデス愛好家としての活動状況の紹介 - 80年代の過激チューナー「ケーニッヒ・スペシャルズ」とは何か

皆様こんにちは。デコタミンです。今回はYouTube以外での活動状況を紹介させて頂きたいと思います。

ご存じの通りデコタミンは旧車メルセデス愛好家の一人です。愛好家としての主な活動はレア車の保存と、80年代に流行したケーニッヒメルセデスを現代に復活させることです。個々に述べたいと思いますが、まずは旧車メルセデス愛好家たちの世界がどういったものか、簡単にご紹介させて下さい。

メルセデスは古くから良いクルマを作っています。各年代ごとに愛好家が存在しています。デコタミンは80年代から90年代の車両が主なターゲットです。おそらくこの年代が愛好家の数が最も多いと感じます。この年代の代表車種はW124シリーズ、W126シリーズなどです。この年代の特徴としては、全シリーズにかけてソリッドなデザイン。剛性の高いボディ。アナログな作り。この質実剛健さが愛好家に好まれています。しばしば愛好家たちは旧車メルセデスを「ロレックス」と似たようなものと表現します。

80-90年代に多く走っていたW126シリーズ560SEL。この年代のメルセデスは高い品質とボディの強さに定評があった。

この年代はAMGがまだ独立したチューナーだった時代でもあります。よって、この年代のAMGシリーズは内装はもとより、エンジンまでも職人の手作りだったのです。ゆえに流通台数は極端に少ないです。この希少性もまた、愛好家が好むものです。

旧車メルセデスのコレクターは世界中に存在しています。主にfacebookコミュニティが活発で、情報交換、売買が世界中で行われています。そして日本には多くの状態の良い旧車メルセデスが眠っているため、世界中からバイヤーが買い付けにきます。輸出されていく国はドイツ・イギリス・中国、南アフリカなど様々です。そのため価値は上昇、国内残存数は低下の一途です。これはメルセデスに限らずBMWや他メーカーもです。80年代、90年代のネオクラシックカーと呼ばれるクルマ達は、クラシックとしての楽しみ方と、機関系がまだ陳腐化していないので充分実用に耐えるというところ。そして世界経済がよかったためか、レアで特殊な仕様のクルマが多くコレクターを楽しませてくれる。このように趣味と実用を兼ね備え、更に上昇する価値が実益をもたらすことも人気に拍車をかけています。

デコタミン 旧車メルセデス愛好家としての活動状況

 

W126 560SEC AMG6.0ワイドボディの保存

マニアにとって至高の存在。w126 560SEC AMG6.0ワイドボディ。生産台数が極端に少ない。

これは90年代初頭、メルセデス560SECクーペをベースとしてAMGが作成した1台です。1991年最終モデルになります。V85.6リッターエンジンはAMGにチューンされ6リッターにアップされています。エンジンはM119ヘッドと言われ、当時では次世代型のモデルに変更されています。後方にかけてブリスターフェンダーが装着され、ワイド化されています。

リアクォーターパネルにブリスターフェンダーが装着されており、ワイド化されたボディを持つ。歴代AMGの中でも最も攻撃的なカスタムが成されたモデル。

ホイールはAMGのスリーピースのリム深モデルです。このホイールもまた、愛好家たちによって収集されています。明確な数字というエビデンスがありませんが、世界でおよそ50台程度しか生産されていないと言われています。

美しいフォルムを持つクーペ

内装から外装、すべてにAMGの手が入っている。デリバリー時から当時最上級グレードだったレカロCSEが装着されているのも特徴。

まさにAMGが独立したチューナーであった最後の作品とも言える激レア車両です。デコタミンの手に渡ってから数年が経過しました。海外勢が高値を提示する中で、コレだけは日本に残したい。その一心で獲得しました。何台もの希少車が日本を旅立っていくのを見ました。その度に胸が痛みます。もう彼らは永遠に戻ってこないのです。
この車両は状態が良いので軽い整備しか行っていませんが、やはり定期的なメンテナンスが必要な車です。これはデコタミンをスタートする大きなキッカケにもなった一台です。いずれこの車両で素晴らしい動画を作ってみたいという思いがあったからです。

R129 SL500ケーニッヒを現代に復活

入手当時のSL500ケーニッヒ。長年放置され劣化がひどい状態だった。

これはメルセデスR129型SL500をドイツのケーニッヒ・スペシャルズというチューナーがカスタムしたものです。ケーニッヒ・スペシャルズとはフェラーリやランボルギーニ、メルセデス、BMWなどのハイエンドな車に過激なチューンをすることで80-90年代に一世を風靡したチューナーです。もっとも評価されるのはAMGですが、このケーニッヒにもたくさんのファンが存在しています。デコタミンもこのケーニッヒの熱狂的ファンです。

鈑金屋で修復されるSL500ケーニッヒ。

現存するケーニッヒ車両の多くはコンディションに問題のあるケースが多いです。当時流行したモデルは雑に扱われる事が多いのかもしれません。このSLケーニッヒは当時不動状態のまま手に入れました。ボディはところどころサビが目立ち、エアロは割れていたので鈑金屋で補修と全塗装。アルミは湾曲し、腐食していましたのでフルリペアへ。コンバーチブルの要である幌も不動。内装はホコリとカビにまみれ、燃料タンクから来るサビがホースを伝って全身を浸食。燃料ポンプの交換、タンクを下ろしサビを除去、幌についているシリンダー12本すべてオーバーホール。しかしエンジンハーネスの劣化がひどく更にはコンピューター系も機能していません。現在はそれらのパーツ集めを行っています。すでに供給停止となっている、もしくはあっても非常に高価なため、世界中のオンラインマーケットから一個一個探していく必要があります。

外装の修復と全塗装が終わったSL500ケーニッヒ

ガレージに戻るSL500ケーニッヒ。これから機関系の整備が始まる。極端にワイド化されているのがケーニッヒの特徴。復活までの道のりはまだ長い。

W126 560SELケーニッヒを現代に復活

もっとも愛情を注いでるのがこの560SELケーニッヒ。大型セダンを大型のブリスターフェンダーで武装。後輪のタイヤサイズは345/35/15。これと同サイズを履くのはランボルギーニ・カウンタック、デトマソ・パンテーラなどのスーパーカー。

ベース車両はW126 560SELですが、ベルギーのキャラットというビルダーによって制作された車両です。そこに日本のコレクターがケーニッヒエアロを装着。何人かオーナーが変わった後、デコタミンが引き継ぎました。保管状態が悪く、エアロが大柄のため、至る所が破損しています。そこから水が浸入しサビを進行させます。

まずは機関系の整備に着手しました。エンジン以外のパーツほとんどを交換しました。燃料タンクからは相当なサビが出てきたため、専門業者に除去を依頼したり、プロフェッショナルの手を借りて細部まで仕上げました。そのため機関は好調ですが、サビに浸食されたボディ修復がものすごく大変です。

エアロのほとんどに割れがある。ここから水が浸入しサビを発生させる。長期に渡り内部からサビていく。修復は大変な作業。

大柄なエアロはパテとリベットが多用されており、簡単に取り外すことはできません。それでも経験のある鈑金屋さんを頼りに現在修復中です。しかし最も大変なのは内装の劣化です。特にキャラット社独自に制作されたウッドパネルは標準のメルセデスのウッドパネルより大きく、そして模様が複雑です。

ウッドパーツ数は30点にものぼる。一点モノのため交換は不可能。色合わせのためすべて同時にリペアする必要がある。これは非常にコストの高い仕事。そしてキャラット社の上質な木目を再現することは不可能。

この車両のレストアは、すでに手に入れてから5年近く経過しています。公道を走らせたのはほんの数回です。完璧な状態に仕上がるまではまだ相当な時間とコストを要します。なぜこんな大変なことをするのでしょうか。何故ならそれが愛好家というものだからです。

横幅は2m越え。長さは5m越え。非常に大柄なボディを持つ。

リアだけでなくフロントにも285/40/15という極太タイヤを履く。ゆえにワダチでステアリングが取られやすい。こういった事をデメリットと感じないのも愛好家の習性。

キャラット社によってリメイクされた内装。ウッドパーツ点数が増し、ステアリング・メーターも変更されている。

各パーツの修理。ノーマルマフラーを全国探し回りブラスト処理して新品同様にリメイク。

愛好家が価値を感じるところはどこでしょうか。それはこの車両が正規品で作られているかどうかです。ケーニッヒの熱狂的ファンであれば、ケーニッヒパーツは正規品であってほしいものです。残念なことにケーニッヒエアロは当時流行していたため、多くのフェイク品が出回りました。よって、オーナーとしてドイツ・ケーニッヒ社に連絡を取りました。各パーツ細部の写真をケーニッヒ社から求められました。すべて提出し、しばらくした後にシリアルが適合したという理由で正規品認定プレートを発行してもらいました。この認定プレートの存在がレストアの苦難を乗り越える源にもなっています。

ドイツ・ケーニッヒ・スペシャルズ社から送られてきたオリジナルパーツを示す認定プレート。愛好家にとって、この認定プレートは大きな意味を持つ。

 

 

もっとも待ち望んでいるのはW126 560SELケーニッヒの復活です。80年代に一世を風靡したケーニッヒが、再び完璧な姿で現代に走る。これが叶えたい夢です。

レストア後は純正色のソリッドブラックに変更されます。当時の姿を再現し、日常使いする。それに向かって奮闘しています。

派手なフォルムのケーニッヒの評価には賛否両論があります。スーパーカーレベルのタイヤを履いた4ドアセダン。それは一見すると劣化したクルマに見えるかもしれません。しかし愛好家たちの視点からすると、それはアートです。上級セダンにスーパーカーのタイヤを履かせるバカげたチューナーを愛好家達は愛しているのです。

 

当時のケーニッヒ・プロモーション画像。コンバーチブル・クーペは超希少。日本にも複数台所有する猛者がいる。

オリジナルの状態で迫力満点なフォルム。少し前は中古車市場に出回る事も多かった。しかし多くは海外のバイヤーに引き取られている模様。

これは愛好家の友人がレストアしているw126 560SEC キャラット・コンバーチブルクーペ。特に幌の部分の修理は大工、鈑金、幌の張替え、電機など各分野プロの協力が必要。

内装を取り外し、サビを除去。そして一つ一つ組み上げていく途方もない作業。ボディ・内装・機関すべてに手を入れる必要がある。よってレストア作業は数年にも及ぶ。

ケーニッヒ・スペシャルズ社はランボルギーニやフェラーリも手掛けていた。

 

以上、YouTube以外で活動している内容のご紹介でした。どの車種にも、どんな世界にも愛好家というのは存在しています。愛好家同士の絆は強く、海を越えていきます。遠くない先に、復活したケーニッヒをデコタミンチャンネルで世界中の愛好家に見てもらいたい。いろいろな想いを胸に、チャンネルを運営しています。是非皆様、これからもデコタミン洗車をよろしくお願いいたします。

560SELケーニッヒの洗車動画
この洗車の後、鈑金に旅立っていきました。