デコタミン・ビジネスレポート - 米国カーディテイリング業界の考察

このレポートはすべてデコタミン視点で書かれています。カーディテイル業界のマーケットリーダーである米国現地の状況を報告します。各メディアのレポートと、直接自分が見て聞いた事と、考察が書かれています。内容を保証するものではありません。

いくつかのレポートを見ていると、カーディテイル業界の約10年後は300、400億ドル(3~4兆円)規模にまで成長する可能性があると一説では言われています。このカーディテイル業界と一言で言っても、自動洗車機や補修などの人が手で行うディテイルだけを示しているものではないというところに注意が必要ですが、とはいえ総じてこの業界は上昇基調にあり、今後も力強い成長をしていくと推測します。

このカーディテイルマーケットの30%ほどを米国が占めており、既に米国は業界の支配的存在に位置しています。しかし急速に発展しているのはアジア地域です。アジア地域の中でマーケットをリードしているのは中国とオーストラリアの模様です。特に中国は新車販売台数、高級車の販売台数が増加したことによって、マーケットが急速に伸びていると予想されます。カーディテイル業界は新車販売台数に比例すると見れば、今後も中国はアジアマーケットを引っ張っていく強い存在になると思います。特に中国は圧倒的な生産国でもあるので、マーケットが成長すればするほど、中国への発注も増えるでしょう。実際に多くの米国ブランドが中国へ生産を委託しています。

こういった成長産業は個人にも企業にも多くのチャンスを与えます。個人からプロフェッショナルへ、YouTuber、オンライン販売、ブランド展開、様々な情報発信。成長産業に目を向ける事は悪いことではありません。カーディテイル業界が総じて成長が見込まれるのであれば、日本マーケットも更なる成長が見込めると考えます。アジア地域の中でも日本の存在は決して薄くありません。実際に日本進出を希望する米国ブランドは存在しています。今後より一層、欧米から様々なプレイヤーが日本にも参入すると予想できます。それは日本マーケットに多様性をもたらし、よりディテイリングがユーザーにとって身近な存在になっていく事を意味するでしょう。

では早速マーケットリーダーである米国のリテール(小売り)業界の様子を報告したいと思います。

私が住む周囲にはコンビニの数ほどのカーケアストアが存在しています。Auto ZoneとO’Reillyなどの大手チェーン、PEPBOY、AdvancedAutoなど様々なブランドが展開されています。

AutoZone

 

O’Reilly

 

クルマに必要な工具やオイル、ケア商品が効率よく置かれています。

 

AutoZone店内。たくさんのオイルが並びます。移動はすべてクルマなので必要な消耗品はどこにいっても揃っている印象です。

 

装飾類も。

 

タフなツールも並ぶ。トラック文化らしい光景です。

 

ケミカル類。

 

ポリッシャーも。

 

必要なカーケアグッズが揃います。

 

こういった規模の店舗が至るところにあります。夜遅くまで営業しているストアもあり、カーケアストアはドライバーにとって必要不可欠な存在です。リテール市場において、取り扱いのある製品はほぼ米国ブランドが占めています。値段は総じて安価です。一般消費者と近い距離にあるカーケアストアでは、コストパフォーマンスに優れたアイテムが選ばれやすいのでしょう。

米国のクルマ社会は懐が非常に深いです。古いクルマも、今にも朽ち果てそうなクルマも当たり前のように走っています。そういう姿を見ると米国民はクルマの美観に無頓着と思えるかもしれません。しかし逆に、クルマの美観にこだわる人も相当数存在してます。

カスタムされたピックアップトラックに乗る彼は2日に1回、ここセルフ洗車場でクルマを洗うと言います。こういったマニアも相当数存在しています。日本のSoft99、フッ素コートワックスを輸入して使っていると言っていました。

 

非常に美しい美観を持つクラシックカー。美観に徹底的にこだわる人も多く存在しています。特にクラシックカーオーナー達は美観維持に神経を注ぎます。ガレージに機材を揃え、あらゆるケミカルを知り尽くしている人も存在しています。

 

この量販店というドライバーに最も密着したマーケットの中で主要なカーケミカルブランドはどこでしょうか。

 

実際に店員さんにインタビューしました。

 

Meguiar'sはポピュラーな存在。

 

グリオズはオールドカー向けによく使われている。

 

アダムスもポピュラーな存在。

 

タートルはコスパ良い。

 

303プロテクタント。愛用しています。

 

これらのブランドは、別のストアに行っても共通で置かれています。米国のリテール業界はマーケティングに非常にシビアだと言われます。徹底してユーザーが求めているもののみを取り扱う。そうやって熾烈な競争を勝ち抜いているのでしょうか。新興企業がリテール市場に進出することは、困難な道のりとも言えます。新しいものが受け入れられやすい日本市場とは違って、米国市場は保守的ともとらえることができるのかもしれません。

 

必要最低限のグッズが置かれています。

こちらはウォルマートのカーケアコーナーです。

ウォルマートでもフォームキャノンが買えます。

この産業には様々なプレイヤーが存在します。製品はOEMで調達し、マーケティングで勝負するプレイヤー。自社製造にこだわり、品質を売りにするプレイヤー。米国の民は品質と価格にシビアなので、市場に残り続けるのは厳しい道ですが、一度消費者に受け入れられると息が長いという性質があります。こういった口コミ・返品が文化として浸透している米国市場で戦うプレイヤーは、あらゆる人種、あらゆる環境で公平にテストされます。

 

市場で評価の高い3D car care。100%生分解性にこだわった製品群を持つ。巨大なファクトリーを持つ米国でも数少ない自社製造の老舗メーカー。世界一の自動車大国である米国では、それに付随する産業も巨大です。最近は安全であることと環境へ配慮された製品がユーザーの信頼を得やすい傾向があるようです。

P&S Detail Productsも自社製造のメーカーです。サンフランシスコの巨大ファクトリーで生産されています。こういったより専門的な製品の多くはオンラインと、ディテイラーなどの専門店で展開されます。

 

こちらは最近急成長しているケミカルガイズ新店舗。1階全フロア貸し切りです。

 

以前は地価の安いエリアのガレージに店舗がありました。

 

まさに進撃のケミカルガイズ。

 

こちらはプロフェッショナル向け大口の商談スペース。

 

ケミカルガイズ達。

 

ディテイル作業に必要なものすべて網羅しています。

 

ケミカルガイズはたくさんのアイテムを出す事によって、顧客ニーズを捉えようとしている印象があります。ケミカル、ツール類ともに相当数を揃えています。技術会社というよりはマーケッターという印象を受けました。各々が各々のやり方で地位を確立しています。最大の消費国米国。見ているだけですごくおもしろいです。

 

米国には様々なカーケミカルメーカーがありますが、日本に進出したい企業も存在しています。何故ならP&S社からそういった企業の紹介を受けることがあるからです。米国企業は自らの手で進出しようとすることは稀で、多くの場合、現地国でパートナーを探し、販売からマーケティング、ブランディングすべてを委託します。これは合理的な選択です。文化も習慣も言語も何もかも違う日本は諸外国からすると難しいマーケットなのです。そういったブランドと交渉し権利を得るというのは日本市場にまた新たな選択肢を提供することになります。是非あなたのビジネスに米国ブランドを加える事を検討してみてはいかがでしょうか。日本市場を魅力に思っている米国企業はたくさん存在しているはずです。

さて。ディテイル業界といっても、その種類は様々です。ディテイラーも数多く存在していますが、一般消費者はもっぱらオートウォッシュが主流です。自ら車を洗うドライバーは少数派とも言えます。特に砂埃が付着しやすいロサンゼルスの環境ではオートウォッシュ事業、モバイルディテイラーが数多く存在しています。最近は最新鋭のマシンを導入している事業者も多いです。大型の投資が必要ですが、クルマの美観を保つという需要が高まっている状況では最適解なのかもしれません。

ガソリンスタンドにはこういった窓用のスクレイパーが常備されています。窓がホコリですぐ汚れるので毎回これで視界を保っています。

 

ハイアマチュアの洗車ユーザーと話しをしていると、おもしろい気づきがあります。まずディテイルという言葉のイメージについて言及しました。Detailはリンス・シャンプー・細部ブラッシング・ポリッシング・ペイントプロテクションの一連の流れのイメージが強く、このディテイル作業を行った後、メンテナンスウォッシュに移行していくという流れです。最近はこのメンテナンスウォッシュにリンスレスケミカルが多く使われるようになってきました。今後主流ケミカルになっていくかもしれません。CarProのEch2oが良い参考例です。P&SはAbsoluteというリンスレスウォッシュ剤を最近リリースしました。

現在Absoluteの試験をしています。使い心地は良いです。拭き上げた後は光沢が戻ってきます。一度ディテイル作業で車を細部までキレイにし、その後は簡単なリンスレスウォッシュ剤で手間をかけず汚れを除去する。これは長期に美観を保つというフローに最適です。P&SケミカルAbsoluteは次回ロットで入荷予定です。

↓リンスレスウォッシュの事例

 

ディテイル作業は外部と内部に大別されます。エクステリアとインテリアです。どちらも重要なプロセスです。特にインテリア洗浄はCovid-19をキッカケにより重要さを増しているようです。人が直接触れるのはインテリアなので衛生的であるべきです。また中古車販売において、インテリアの美観は価値向上に寄与します。また、インテリアパーツの補修はエクステリアの補修に比べて高いコストがかかる場合があるので、注意を払う価値は十分にあります。こういった流れがあり、スチームクリーナーの市場が拡大傾向にあるようです。スチームクリーナーは高温の蒸気により殺菌効果が期待できます。日本市場はエクステリアディテイルに特化している傾向があるので、今後はインテリアディテイルにも注力していくことで新たなビジネスチャンスを得る事が可能かもしれません。

ガソリンスタンドに併設された巨大なインテリア清掃スペース。これだけのスペースすべてインテリアケアに割かれています。

私達P&S社もインテリア洗浄に力を入れています。P&Sケミカルの代表作がエクスプレス・インテリアクリーナーです。創業から長きに渡って愛されるロングセラー商品です。肌が触れるインテリアに使う洗浄剤は安全で残置物フリーである必要があります。

P&Sエクスプレス・インテリアクリーナーの洗浄力と艶出し効果をセットにした新製品SWIFTを検証しています。

 

ディテイル市場は一般消費者には理解が難しいものです。洗車と一言で言っても、やるべき工程が多く、それらは専門的です。しかし、一度ディテイル作業をやってみると魅力に取りつかれる人も多いです。アマチュアからハイアマチュアに、ハイアマチュアからプロフェッショナルに。こういった流れは市場の拡大に寄与します。米国市場を見ている限り、確実にDIYディテイラーが増加しているように思えます。おそらくこの流れは世界的な傾向だと推測します。そして市場を先行していた欧米プレイヤー達は急成長段階にあるアジア地域に熱い視線を注ぐ事でしょう。製品を作るメーカー、それを使うディテイラー、ユーザー、両者をつなぐインフルエンサー、マーケッター、様々なプレイヤーがディテイル業界の成長を支えています。特に情報の橋渡し役であるYouTuberなどのインフルエンサーの重要性はより増していくと予想します。ディテイルを知ったユーザーはクルマの美観に酔いしれ、それを提供した人々は適切な報酬を得て、さらに良い情報や製品に投資する。市場に関わった人すべてが恩恵を受ける。そういう良いサイクルがこのディテイル市場にはあると思います。デコタミンとしてこの市場に身を置ける事を誇りに思います。以上、米国レポートでした。

 

参考メディア
ibisworld market size
TransparencyMarketSearch
FutureMarketInsight