設備セラーとして顧客に何を提供するべきか。RMスタナーケミカルインジェクターのセットアップやり直し

現在、オーダーメイド製作の依頼を受けてR+M Suttner(RMスタナー社)のケミカルインジェクターのセットアップを進めています。
RMスタナー社の製品は、納品されたまま使えるパーツというのは稀で、ほとんどはクライアントの要望に応じて他のパーツと合わせ組み上げていく必要があります。このケミカルインジェクターはその最たる例で、自在なレイアウトが可能な分、セットアップに必要なパーツは多岐に渡ります。
これが一度組み上げたインジェクター本体です。上部のエルボから高圧水が入り、インジェクター本体を通過と同時にケミカルが吸い上げられ混合液が生成されます。そして下部のエルボから出ていくという構造です。
ホースを差し込む角度、この場合は3時の方向でエルボをピッタリ止める必要があります。こういった希望位置で止水したい場合、テーパ状のネジが最適です。テーパであれば、きつく締め上げながらも希望位置で止めることができるのです。止水にはシールテープを用います。
しかしシールテープはやがて漏れる運命にあります。長い時間や、かかる圧力によって徐々に痩せていきます。そこから水漏れが始まります。特に今回インジェクターに合わせる高圧洗浄機は熱水噴射と動力で稼働するフルパワーマシンです。常時20Mpaと熱水に晒される環境で長期間止水できるでしょうか。もし短期間で漏れてしまった場合、クライアントを困らせることになります。
これにはとても悩みました。納品時に漏れてなければOKかもしれません。でもやがて漏れるはずです。やはり全部組み直す事にしました。ガチガチに組み上げたエルボを分解するのは骨の折れる作業です。でも、やるべきです。
シールテープに加え、ロックタイト激盛りという仕様で組んだので、分解したくとも手の力ではビクともしません。あまり新品パーツにやりたくはありませんが、バーナーで熱します。ロックタイトは200°で緩みます。ステンレス素材が焼けないように絶妙な距離とを保ちつつ熱していきます。
ようやく外れました。
シールテープとロックタイトの残りカスを取り除いていきます。インジェクターの中にカスが残るとノズル詰まりの原因になるので入念に清掃します。
ここまでキレイになれば大丈夫です。最後はエアーで飛ばします。
そしてエルボを超高圧用に交換します。60Mpa対応で、ネジ仕様はG平行です。分厚い素材でガッチリ作られています。イタリアPA社のものをチョイスしました。ジョイント+エルボのセットで3万円のコストがかかります。クライアントに事情を説明し、予算を組んでもらいました。このあたりは賛否両論ありますが、私はG平行ネジにロックタイトのほうが止水能力が高く、耐久力が長く続くと思います。ちなみにヨーロッパ製品はG平行ネジが主流で、米国はNPTテーパネジが主流です。
右が最初に組んだコスト安の大量生産品の組み合わせ。左がイタリアPA社の超高圧対応エルボです。大きく、分厚く、重くなりました。でもドイツRMスタナー社の精密なインジェクターにはこのくらいのほうがマッチしています。例えば超高圧対応の金具をRMスタナー社で揃えた場合、イタリアPA社より更に高額になります。イタリア製は中国製より高品質で、ドイツ製より安価なのです。
G平行ネジには難所もあります。テーパネジのように、締め上げながらも希望の位置で止めることができません。G平行ネジはネジ山の最後まできっちり締め上げる必要があります。ゆえにエルボを希望の位置で止めることができないのです。
この場合は銅ワッシャーを使って止める位置を調整します。ワッシャーを潰しながら位置をあわせるという意味です。
外側にアルミワッシャーを装着しながら、3時の角度に向けて絶妙な調整を行っていきます。ぴったり精度を出す事は難しいので、ある程度ホースが装着できる角度まで持っていきます。
しかし超高圧対応のジョイントは精度が高く、締め上げる感覚が全然違いますね。ガッチリとネジ山が噛み合わさっていくのを手で感じます。洗車設備は圧力に応じてパーツ素材、生産国に目を配りながら最適なものを選定することが重要だと感じました。
組み上げました。いろいろ失敗し、丸一日かかった気がします。重量は更に増し、ゴツくなりました。
設置しました。ホースの装着角度も問題なさそうです。
仕上がりです。ここに常時20Mpaの熱水が通ります。スペックは十分なので、これなら水漏れは恒久的にないのではないかと思います。
この部分の漏れは致命傷に繋がります。漏れが発生すると圧力は低下し、周囲は水びたし。顧客のビジネスはストップします。100%漏れない保証はないけれど、有事に備えるのは重要です。
洗車設備のセラーとしてデコタミンストアは活動しています。こういったエクストリームな設備を要望するクライアントに、どこまでの品質を提供するかは難しいラインです。特にRMスタナー社やクランツレなどのドイツ製品はとても高価です。これらの製品を選択する顧客に対しては「確かなモノ」を提供するべきです。納期は長くかかりますが、優先するべきものを見失わないようにしようと思います。
さて、インジェクターのセットアップはこれだけでは終わりません。今度はランスの製作も必要です。それはそれはまた大変なプロセスが待っています。是非、進捗レポートをお待ちください。