高圧ノズルチャート - 水量と水圧を的確に操るためにオリフィスの最適セッティングを知る
高圧洗浄機は洗車において土台とも言える重要なツールです。高圧洗浄機は手の届かない細かな部分まで水を送り込み、汚れを除去します。またケミカルの希釈装置にもなります。まずこの高圧洗浄機を手中に収めることが、洗車を追求していくうえで重要なポイントになります。
実際のところ、高圧水は高圧洗浄機本体で作られるものではありません。本体は水を押し出しているだけに過ぎず、実際に圧力を作り出しているのはホース先の射出口(ノズル)です。
よって、ノズルを付け替えるだけで圧力と水量をある程度コントールすることが可能になります。
このノズルにはオリフィスサイズが設定されています。オリフィスサイズとは水の出口となる穴の直径のことを表しており、通過する流量や圧力に影響を与える重要な要素です。高圧洗浄機本体が持つスペックにより、このオリフィスサイズは規格化されており、以下の特性を持ちます。
オリフィスサイズが大きい
→ 流量が増加し、圧力は低下する
オリフィスサイズが小さい
→ 流量が低下し、圧力が増加する
最適なオリフィスサイズを知るために、チャートを作成しました。
表の見方
- 青い行は高圧洗浄機が持つ常用圧力です。メガパスカル表記です。日本で一般的に使われる100V電源用は10Mpaあたりが限界です。
- 緑のゾーンは一分間あたりに吐出できる水量を表します。リッター表記です。
- 赤の列はオリフィスの規格サイズです。これは直径の寸法を表しているわけではありません。
ではクランツレK1122TSを例にしてみます。
K1122TSは水量6リッター/分 常用圧力10Mpaという業務用スペックを持ちます。このスペックを適切に出すために最適なオリフィスサイズは何でしょうか。
- まずブルーの行から適合する圧力を探します。この例では赤字の部分が該当します。
- 次に適合した項目から下にずらしていき、もっとも近い水量の項目を探します。5.6か6.8で迷うところですが、この場合は大きい数値を選択します。その方がモーターに負担がかからず安全に利用できるからです。
- 6.8リッターを選択、そこから左にずらしていき、合致した赤の項目の部分が最適なオリフィスサイズとなります。この場合オリフィスサイズは”3"になります。
次に最もポピュラーなケルヒャーK2サイレントで見てみます。
K2サイレントのスペックは公式によると水量310リッター/時となっているので分に直します。310 / 60=5.1なので毎分約5リッターを吐出します。常用圧力は7.5Mpaです。
常用圧力は四捨五入して大きく見積もりましょう。よって青の行の8Mpaを選択。そこから下にずらしていき、5リッターに一致。そこから左を見て、赤の列オリフィスサイズ”025"が導き出されます。
その他のケルヒャーシリーズは以下のようになります。
ケルヒャーK3サイレント
常用吐出圧力:7.5Mpa
常用吐出水量:5.5L/分
オリフィスサイズ:030
ケルヒャーK5サイレント
常用吐出圧力:8Mpa
常用吐出水量:6.6L/分
オリフィスサイズ:030 or 035
高圧洗浄機を操る - 圧力を落とす
高圧洗浄機の能力を正しく出すためのオリフィスサイズが決まったら、それを基準として、サイズを一つ、2つと上げてみましょう。オリフィスサイズが大きくなれば水が通過する抵抗が少なくなるので当然圧力が低下します。弱い圧力は水の跳ね返りを抑えたり、エンジンルームの電子パーツ付近などデリケートな部分を洗浄するのに最適です。ここで注意する点は、オリフィスサイズを大きくすれば水量も増えると思いがちですが、水量はポンプの容量とモーターの能力により決定されるので高圧洗浄機が持つスペック以上に増えることはありません。また、オリフィスサイズを上げると圧力が抜けてしまい、正常に機能しなくなります。
例えばクランツレK1122TSの場合、オリフィスサイズを"5"くらいに上げるとソフトな圧力で跳ね返りも少なく、やさしく洗浄することが可能です。
高圧洗浄機を操る - 圧力を上げる
ではオリフィスサイズを基準より下げると仮定します。穴が小さくなれば通過する水量は減ります。そして抵抗が増すので圧力は大きくなります。ボディ表面やホイールのひどい汚れを除去したい場合には有効かもしれません。しかし圧力を上げる高圧洗浄機のポンプとモーターに負荷がかかるのでより一層の注意が必要です。原則、基準より小さいオリフィスサイズの使用はオススメできませんが、リスクを知った上で限定的に利用するにとどめておきましょう。オリフィスサイズを下げて使う場合は高圧洗浄機のスペック「常用圧力」を超えるようなサイズを使わないようにしてください。過電流が生じ、ブレーカーが落ちる原因になります。
しかし曖昧な高圧洗浄機界隈
ここで説明したオリフィスサイズの導き出し方は一般的な手法であるということに留意して下さい。ほとんどの高圧洗浄機の公式スペックは本体に設置されたポンプの圧力と水量を表記しています。しかし正確な計測は、射出口で計測する必要があります。つまりホース先端の圧力と水量を見るべきなのです。しかしそれは専用の計測器がないと難しく、かつ各々の環境、ホースの長さによってバラつきます。よって↓
正解は使い手が決める
チャートはあくまで基準値として知っておき、自分に合ったセッティングは自分で導き出すことが最良な道です。
200Vマシンだとどのようになるでしょうか。200Vマシンは100Vマシンの倍以上の能力を持つものがあります。クランツレ・クアドロシリーズを例にしてみましょう。
能力は常時圧力22Mpa、水量は15L/分にまで到達します。チャート上では"4.5"が適切ですが、これだとクルマには圧が強すぎるので"5"を最適として利用しています。このようにオリフィスサイズを知れば、自分の好みに高圧洗浄機をコントロールすることが可能になります。まず仕組みを把握し、次に基準値を知り、そして自分にあった最適値を導き出しましょう。
高圧洗浄機とオリフィスは洗車の足元
高圧洗浄機は高圧洗浄だけでなく、ケミカル希釈、噴射装置としても機能します。オリフィスサイズにより水量が変われば希釈率も変わってきます。正しい希釈をするためにはまず、使っている高圧洗浄機でどのくらいの水量を出すのかを把握することが重要です。
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